2024年10月の成分表
ネタバレとかの自衛は各自でお願いします 倍率80%くらいが読みやすいです
目次
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10/2
- 鷲羽巧『オブスクラ:鷲羽巧短篇集』 10/10
- ハン・ガン『すべての、白いものたちの』 10/13
- 『9 -nine- はるいろはるこいはるのかぜ』 10/14
- 『9 -nine- ゆきいろゆきはなゆきのあと』 10/17
- 『9 -nine- 新章』 10/14
- ふたと「蜃気楼じゃなきゃ」 10/18
- あかしあ「そら惚けの空に」 10/19
- 杉谷庄吾『ニャリウッド!1 NYALLYWOOD STUDIOS SERIES 映画大好きマズルカちゃん』
- 杉谷庄吾『ニャリウッド!2 NYALLYWOOD STUDIOS SERIES 映画大好きアランくん』 10/21
- 長谷川白紙 First tour 2024「魔法学区」 10/26
- 名取さな 1st Live「サナトリック・ウェーブ」昼・夜公演 10/27
- タヤマ碧『ガールクラッシュ』1~95話 10/29
- 竹田人造『AI法廷の弁護士』
- 今月の振り返り
10/2
鷲羽巧『オブスクラ:鷲羽巧短篇集』
鷲羽さんの文章は、はてなブログで書いているものをいくつか読んだことがあって、とくに『文体の舵をとれ』の実作は他のひとがどのように課題を書いているのか知るさいに非常に参考にしていたし、感銘を受けたものはいくつもあった。そんなわけで私のなかでは「文章が上手いひと」という認識のフォロワーのひとりではあったのだけど、実際に書かれた短編は読もうと思いつつ読んでいなかった。蒼鴉城買おうかな~と思ってBOOTHでまとめてカートに入れつついくつかは品切れになってみたいな状況だったところ、自作をまとめた同人誌を出したというので読んだ。面白かった。
京大ミス研の会誌で発表されたものなので基本的には全編ミステリなんだけど、ロジックを詰めた(いわばミス研らしい)犯人当ては最初の二編程度で、whatを問うような広義ミステリに近い、驚くほど幅広い作品が収められていて、楽しい。オーセンティックなホームズトリビュートといった作品もあればSFてきなものもあり、ルポルタージュ的に故人の真相に迫っていくものとか、写真をめぐるコンゲームものとかもあり。
それぞれまったく別々の作品として、統制がとれた文体でウェルメイドにつくられているものの、テーマには一貫して「なにかを文章に残すこと(物語ること)とその功罪」への意識があるのがこの本の、あるいはこの作家の特徴と言えると思う。なんらかの出来事に接した私たちは、そこにたち現れる物語を読みとってしまうし、そうした言葉を通してしか出来事に触れ得ない。けれども残ってしまう言葉と、出来事とのあいだで、物語ってしまうことを肯定することも否定することもできず当惑している。そんな感じ。同時に「それでも大丈夫だ」と手を差し伸べることもテーマのひとつになっているのだけど、実のところ、この保証には内実がない。「明らかに」物語ることがもつ暴力性は存在する。けれども書いてしまうことは止めればよいものでもないし、ときには救いにすらなってしまう。無邪気に物語を信じることはできず、けれども物語というなにものかを信じ続ける、そうした両義性のなかのこの祈りは作者が自分に向けて差し伸べている手に等しく、この構図のなかに救いの手がない点で袋小路だ。そんなことを思いつつ読了後、あとがきを読んだらこの道は袋小路だと自ら書いていてちょっと驚いたりした。でも自覚的に物語ること≒騙ることを俎上に載せてコンゲーム的なことをしてる表題作とかめちゃめちゃ面白いじゃんと思いつつ、ラストはけっきょく本当は何が起こってたんすかね~という部分が曖昧に後景に引いていって「でも大丈夫だよね~」という感じで終わっていってしまったので、確かに袋小路なのかもしれない。明快なwhatを書いてきれいに物語を終わらせるのも、物語をひとつの宝石のようにしたいという欲望の果たせるものであって、面の皮の厚さが必要な営為なのかもしれないという気づきがあった。
ただ、この本に収められた物語はまた、間違いなく、いずれも文章のひとつに至るまで美しくあろうとしていることも事実だ。少なくとも物語そのものの見せ場ではない場面ですら魅力的にしてしまう偏執さがある。その偏執さが物語ることそのものに対しては一歩当惑している感があるのが今後どうなっていくのか楽しみに思いつつ、文章としていちばん心に残ったのはそういうなんでもない箇所の以下の文章だった。百合~~とか関係性萌え~~~みたいなものを大々的に感じられる本ではないものの、関係性は文体のなかに細かく砕かれ偏在するものである以上、そうしたものに興味のあるみなさんはぜひ読むように。
警部が戻ってくる気配がする。それでもわたしたちは手を握り合ったままだ。夜の刑事課を出入りする警官たちの足音が忙しない。そこに時折鳴っては切れる電話の音、書類がめくられる音、報告と命令、互いへの呼びかけ、そしてわたしたちの密やかな笑い声がささやかに混ざり、交叉して、一秒にも満たない休符を奇跡的に打ち、やがて、ばらばらに別れる。
p.147「鳥類学者の記憶法」より
10/10
ハン・ガン『すべての、白いものたちの』
フォロワーがおすすめしてたので読まなきゃな~と思って買ったまま数日置いておいたところ、サプライズノーベル文学賞受賞があり(このサプライズはノーベル賞シーズンなことも知らなかった私に対してのサプライズです)、その日中に読んだらまだギリミーハーじゃないか? と思ってその日のうちに読んだ。ぜんぜんミーハーだと思う。そういう読み方をした本は初めてかもしれない。
小説家の文章に重みをもたせるのは人生経験だ、みたいなことをいえばなんて浅い言葉なんだと驚かれるだろうが、それは一面ではそれがあまりにも当たり前のことだからで、日々考え感じたこと、手触り、記憶といったものはどうしようもなく文章を通して伝わりうる。それを伝えようとする限り。畢竟、文字と文字のあいだのつながりに驚きを、詩情を、あるいは重みを感じるとき、そのつながりの強度は、その言葉が語り手のなかでどれだけ反復されたかによっている。いかに一見突飛に見える文字同士のつながりであっても、そのひとのなかでどうしようもなく絡み合い、そうとしか言い表せないそれとなった言葉。まったく私にはそうした経験がないのに、あなたはずっとそれを考えてきたのだとわかる、そうした文字の羅列。どこまでも個人的な経験を描いた物語がどこまでも普遍的な教訓のように受け取られうるのと同じ仕方で、どこまでも個人的な出来事が、記憶が、そうとしか言い表されない個人的な文字列の重なり合いとなって、文章の重みとなって、ひとつの物語がたち現れる。この本はそうした物語のひとつだと言えると思う。静謐な世界のなかで、冷たい白のなかで、清らかな白のなかで、確かに人間がいる。
10/13
『9 -nine- ゆきいろゆきはなゆきのあと』
9-nine-シリーズの全4章中の第3章。9-nine-シリーズは諸事情があってプレイしなきゃ! と思い半年くらい前に4分の2までクリアしたところで「めちゃめちゃ面白かった……」と満足してしまっていたので、半年ぶりに再開した。ここで先に言っておくと、9-nine-シリーズは全編通してめちゃめちゃ面白かったのでおすすめです。前情報とかとくになくプレイできたのもよかったので、そのようにするとよいと思う。
このゆきいろ~はOPとEDが堀江晶太で嬉しい〜〜〜〜〜という感情があった。(堀江晶太のオタクなので)出た当初に提供曲目当てでPASTA!2 Compilation Albumを手に入れているためハルトキもそして愛になるも何十回も聴いたことはあるし、とはいえこの2曲は堀江晶太提供曲のなかでとりわけ好きな方というほどでもないのですが、適切な文脈のなかで鑑賞できるのは嬉しいものがありますね。本編の内容としては、前作のプレイから何故か半年ほど開けてしまったものの、そこそこツイストの効いたことをしつつも最後には「王道だったな……」という感想になるように全体を上手くまとめ上げている手腕が相変わらずで、とにかく楽しかった。各々のキャラクターの魅力を引き出しながら物語を進めていくテンポのよさもそうだし、各作品ごとに物語を分岐させて別ヒロインを攻略していく構造をストーリーの要素にも絡めて最大限に有効活用しているところとか、各キャラの見せ場を作りながら説明でゴリ押さずに爽快感と納得感のあるバトルシーンとか、上手い……楽しい……という感じになる。あと某シーンで九條さんと同じような能力の使い方するシーンで手叩いて笑っちゃったんだけど、ライターの執拗なこだわりが見えてよかったです
10/14
『9 -nine- ゆきいろゆきはなゆきのあと』
めちゃめちゃ面白かった…… 前作までの内容を活かしたオーバーロードシステム自体も斬新だしめちゃめちゃおもろいわね〜〜〜とか思ってたところ、急に『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』(新⭐︎ハヤカワ・SF・シリーズ)が始まるところで本当に笑顔になってしまった 本当に面白かった こういう展開が好きな層向けのゲームなのかは若干疑問に思いつつ、そらいろとかでもちょくちょく感じてた都筑道夫の『なめくじに聞いてみろ』みたいな殺人をすることへの感情の扱い方というか、そういう部分の扱い方も面白いな…と思ってたところがフルスイングで来た感じが…… えぇ何食ったらこんな解決方法を思いつくんですか……? っていう絆召喚システムとかめちゃめちゃ笑ってしまったし、これは本格ですね……と私のなかの本格センサーがそう言ってるからこれは本格です。
いわゆる美少女ゲームのなかでも、ぱれっと作品は比較的エンタメ、大衆受けを本丸にしている認識なんですけど、どのキャラクターの魅力も丹念に掘り下げながら「ここまでやるなんて思ってもなかったよ〜〜〜」という仕掛けを何度も繰り広げるのは本当に曲芸という感がすごく、とにかくシナリオ構成がめちゃめちゃ上手いですね。いや〜面白かった。シリーズ通して全年齢版ってどういう処理になってるんだろうな……っていう仕掛けがいくつかあるからそこはマジで気になりますね
10/17
『9 -nine- 新章』
面白かった! それぞれのキャラの後日談はそこまでのボリュームもないのでまあ収まるべきところに収まった、という感じなんだけど、ここいろまで遡って物語をきれいに終わらせるのは画竜点睛! という感じで大変うれしい。
ちなみに私は「物語的に意味のないR-18ではないのでR-18版のほうがいいですよ」というアドバイスがあったのに最初間違って全年齢版を買ってしまってたのだけど、そのぶん新章を追加購入する手間は省けたので、それはよかった(R-18版は個別売りの全4章に対して全年齢は1パッケージで新章まで入っていて、R-18版でプレイしたひとは新章は追加で単体で買わないといけない仕組み))。せっかく全年齢版を持っているのだから、と新章までスキップしながらR-18版との差分が気になるところをちまちま観た。とくにそらいろは大事な部分がちょっと薄味になってしまっているな、みたいなところもあったんだけど、上で書いたゆきいろの「全年齢版だとどうなってるんですか……?」みたいな部分がなんのひねりもなくそのままだったので、いいんだ! と思って笑ってしまった。いいらしい。
ふたと「蜃気楼じゃなきゃ」
本当にすごかった…… シャニマスの二次創作です 透がなぜ自作の俳句の書かれた短冊から下五を切り取ったのか、という、いかにも透ならやりそうだという魅力的な謎に対して、下五を推理することから小糸が動機を探ろうとする、と、こちらもいかにも小糸ならやりそうな趣向。この時点でミステリとして魅力的なのに、謎解きそのものもびっくりするくらいに面白くて本当に面白かった。今年の投票はこれ一択ですね。何が?
真実を知るために推理をしていたはずが、そうであってほしい真実に向けて自らの推理を歪めてしまう、そういう「事件の利害関係からは離れた名探偵」ではないからこその不安定さが生む推理の緊張ってあんまり見たことがなかった気がしていて、それが小糸だからこそ、というところも本当に塩梅が上手い。それを諌める円香の役回りも、謎なようで切実な動機をもつ透もふくめてノクチルの二次創作としても本当に大傑作じゃないですかね……
驚くべきことに、この作品を読んで田村らさ作品にかなり近い読み味を感じだのだけど、それはあたかも当然かのように平然と行われる文体や空気感の模写の驚くまでの精度、テーマの扱い方の巧みさ、陰に陽に引用される知識や文化であったりちょっとした小物から見え隠れするセンスのよさ、ため息をつくほど綺麗な構成、あとはそういう細かいこと抜きに圧倒的に面白いところとかがそう感じさせるのだと思う。田村らさ以外のひとの文章で田村らさっぽい! と感じたことはなかったのでびっくりしました。こんなに短編の上手いひとがこの世にふたりもいるんですね……
かなり前からふたとさんの名前は目にしていて、めちゃめちゃ面白いシャニマス二次創作を書くひとらしいとは知っていたのだけど、そういう情報は目に入り次第確かめたほうがいいです。氏の寄稿している『ノクチル反省文合同 いちもうだじん』も注文したので、手に入れたら近いうちに読もうと思います。寄稿してる文章自体はもうpixivにも上がってるみたいです。
10/18
あかしあ「そら惚けの空に」
う~~~んやっぱめちゃめちゃ面白いですね~~~~~ 9-nine-の翔と天が相合い傘でいっしょに帰るだけの二次創作。8000字ちょっとと短いなかで、異常な模写精度の面白会話劇(やっぱり会話劇が本当に上手いと思う)で存分にキャラ萌えして終わりかと思えば綺麗に伏線を回収して落ちをつける、というお手本のような二次創作で、う、うま~~~と手を打ってしまった。
冬だとするとアーティファクト回収は全部終わって返還してるんじゃない? と思ったんだけど、急いでなければまだアーティファクト回収が続いてる可能性もあるか、と納得したりした。
10/19
杉谷庄吾『ニャリウッド!1 NYALLYWOOD STUDIOS SERIES 映画大好きマズルカちゃん』
これは正直あんまりだった。ポンポさんシリーズが本当に大好きで映画版は解釈違いで地雷という厄介オタクなものの、原作には全幅の信頼を置いているので、このために1~3巻までの6冊を読み直したりした。ただ正直このニャリウッド!1に関して言えば全巻読み直すほどでもなかったのだけど、素晴らしい作品は何回読み返してもいいものなのでこのタイミングで1~3巻まで読み返したことは本当によかった。あとがきで事前準備なしに連載が決まって云々とあって納得したし、それでも堅実な(ベーシックな)ストーリーで読ませるものを作れるのもまたクリエイターの力だな、とも思ったり。
杉谷庄吾『ニャリウッド!2 NYALLYWOOD STUDIOS SERIES 映画大好きアランくん』
これは最高でした…… ニャリウッド1があんまりだったところに映画のオリキャラのアランくんの巻か~と不安だったところ、最初の3ページで「いつものポンポさんシリーズだ!」とわかる、そういう何かしらの魔法があった。見せ場が最大の火力を出せるように過不足なく配置されたキャラクターに構成、本当に深いところに手を伸ばさなければ届かないような言葉と鮮やかなストーリー、創作の楽しさを見せてくれて心からありがとう…………と感激しました。映画でもアランくん周りのエピソード自体は別に好きでも嫌いでもなかったので、実際にこう上手くアランくんが物語に組み込まれて活きているのを見ると嬉しい。半分嘘。アランくんをタイトルに冠しつつもミスティアさんとか既存の主要なキャラクターを含めて全部が上手く噛み合って奇跡的に面白い物語を成立させているのが本当に嬉しい。1~3巻まで読み返したのはこのためだったんですよね。ありがとう。
10/21
長谷川白紙 First tour 2024「魔法学区」
長谷川白紙さん……ありがとう………… わたしが初めて聴いた長谷川白紙さんの曲はたしか肌色の川で、少なくとも7年以上前から熱心なファンをしているのだけど、ライブには行けたことがなかった。それはもう行くしかないですよね~~~とチケットを買い、行き、めちゃめちゃ楽しかったです。白紙さんはどこかで以前(ニュアンスが多少違ったかもしれないけど)「ベース(低音)にはあんまり興味がない」みたいなことを言っていた記憶があって、実際そこまで低音の利いたアレンジはしていないと思うんだけど、それらの曲がライブのめちゃめちゃドデカい低音で聴けるのは新鮮というか笑っちゃうくらいの暴力性があって、面白かった。ライブ用にアレンジの変わった既存のアルバムの曲も、ドデカい音の暴力に過去の意図も音も解体され、薪になり火になり、長谷川白紙というなにものかをいまこの瞬間にその場に留めさせるためのものになっていたというか………… これまでのライブも全部こんな感じで、いままでリリースされた全曲最初からこの低音で聞くための曲として作ってたんだったとしたらどうしよう。そうだとしたら……怖いですね…………
2ndアルバムの魔法学校はとくにポップな曲が多い(印象)なのでデカい音とかっこいいVJでノリノリになれて嬉しかった。恐怖の星を大きい音で聴けると……楽しい! ライブ当日にもユニを聴き返していたので、アンコールの弾き語りで聴けたのも本当に嬉しかった。「焱ばみ」の最後の声はずっと"catch me if you can"だと思っていて意味を掴みそこねていたんだけど、"judge me if you can"というのがわかってすべて腑に落ちたと言うか、このアルバムのテーマそのものと合わさって意図を理解でき、それもよかったです。
10/26
名取さな 1st Live「サナトリック・ウェーブ」昼・夜公演
名取さな……ありがとう………… ばくたんは興味がありつつ観れてなかったものの、ここで1st Liveまで見逃したら決定的に名取さなさんを追い損ねる気がして、それでいいのか? と重い腰を上げて公開期限ギリギリにチケットを買い、見た。大正解だった…… ちらっとセトリをみてとりあえず昼公演、と見たところでめちゃめちゃよすぎて泣き、見終わってすぐに夜公演も買い、見、泣きました。「ノーゲスト、イン、ザ、テアトロ。」の1サビの不安定で美しいメロディすごすぎない? 曲のよさもさることながら名取さなさんのパフォーマンスも凄まじく、表現力豊かに歌い分け、歌いこなし、生バンドも合わさって知ってる曲が生まれ変わる感じが本当に楽しく、よかったです
10/27
タヤマ碧『ガールクラッシュ』1~95話
めっちゃ面白かった。K-POPアイドルを目指す少女の物語なんだけど、とにかく漫画が上手くて面白い。流れるような本当に綺麗な線で魅力的にかかれるキャラクターと、それらの絵を有効に見せるコマ割り、演出。演技なりダンスなり歌の上手さを漫画で説得力をもって描けるのって本当にすごいですよね。見開きのキメキメの絵から小さいコマのデフォルメ絵まで本当にかわいくてかっこよくていい絵なのですごい。アイドル練習生という舞台上陰湿な話をしてドラマをつくる手もあるとは思うんだけど、そういうことをせずにアイドルに向き合うことを描いて丁寧で気持ちのいい物語を作ってるので「これってアイカツだ……」ってなった。とはいいつつガールズユナイトまわりのYoutubeのコメント欄の陰湿さだけはなぜかやたらと解像度が高くてウケてしまった。これもフォロワーが勧めてて気になってたところ、ちょうど無料期間だったことに気づいて1日でバッと読んだ感じ。どんどん面白くなり続けてるな……とくにここ数話面白すぎてどうしようと思ってたら最新話に追いついてしまい、あと数話後から長期休載になってしまうらしいのでかなり泣き。ずっと続いてほしいのでみんなも読んでください。
10/29
竹田人造『AI法廷の弁護士』
AI裁判官が導入された日本でAIの脆弱性を突いて無罪を勝ち取るハッカー弁護士が主人公のSFミステリ。前作の『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』がめちゃめちゃ面白かったしな~と思い、こちらも出てからかなり時間は経ってるものの電書のセールで買って読んだ。期待を外さない面白さでめちゃめちゃ面白かった。前作がAIエンジニアが主人公だったのに比べれば今作は主人公が弁護士になったことで技術ドリブンな話が多少は減り、「arXivの野良論文」みたいな言葉が飛び交うことはなくなったものの、「AIとその脆弱性」を軸に魅力的なミステリを組み立てる手際とエンタメの両立が相変わらず本当に上手い。
前作が、犯罪者目線から「既存のAIシステムの脆弱性をどう突いて不可能犯罪を成し遂げるか」とミステリを組み立てていたのに対して、今作では「真犯人はどうやってAIの脆弱性を突いたのか」がメインとなっていて、同じHowを対象にしつつも正反対の角度からミステリを組み立てているのも面白い。同じ法廷を舞台にしながらもエピソードを通して物語をスケールアップさせる構成も上手いな~という感じだし、文章のひとつひとつが小気味よくて面白いので楽しい。あと逆転裁判オマージュもふんだんにあって楽しい。証言台でのモーションが目に浮かぶような証人のキャラ付けとか、法定内に必ず真犯人がいるところとか…… あとびっくりすることに篠澤広さんみたいなキャラクターが出てくる。私は別作品の別のキャラクターを似てるということはあんまりないんだけど似てると感じたのでけっこう雰囲気似ていると思う。あまり食べてなく不健康に痩せてる割には顔が良く、機械に強くて多少のユーモアの心得と自我の強さがあり、ちょっとした体言止めを多用する。という登場数ページの印象に引かれてるのは否めないんだけど、案外あんまり見ないキャラ付けではありますよね。いっさい挿絵とかはなかったんだけど、読了後ハヤカワ公式のnoteで主要3キャラにちゃんとイラストが用意されていてびっくりした。
今月の振り返り
前々から読書記録みたいなものはこのブログでつけたいと思っていたものの、そもそもぜんぜん本読んでないみたいな致命的な問題点とか、怠惰とか、そういうのが重なってできてなかったんだけど、ようやく作れたので満足してます。目次の部分は実装できるか不安だったんだけど、目次の項目をクリックしたらその場所に飛びたいとかいろいろChatGPTに話したらCSSとHTMLを書いてくれてほぼ一瞬で実装できたのでよかった。
主目的は、何を考えていたのかとか何をしていたのかを忘れてもいいように書き残すことです。ここでは読書メーターに書く感想とは基本的に違うことを書きたいという気持ちがあったので鷲羽さんの『オブスクラ』の感想から書き始めたら1500字とかになってマジ? ってなった。基本的にぜんぜん本を読めていないので、もっと本を読んでいきたいですね。こうやってその月のまとめをするとこんな程度で何してたんですか? というのが浮き彫りになるので、引き続きやっていこうと思います。今回は本、漫画、ゲーム、ライブを対象に含めたものの、アニメとか映画も観たら入れるかもしれないし、書くほどでは……と思ったら好きに剪定される可能性はあります。そういえば今月映画観なかったんですね……。文化的な人間とは思えない。そういうのもわかって嬉しい。粛々とやっていきましょう。